ルイは鷹を呼ぶ
一次創作サークル
~世界の終わりに君を食べる~ 不問2 上演時間:30分 作者:白鷹
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【特定利用規約】
※こちらの作品に関してのみ、一人称や語尾などの軽微な変更をしての上演をして頂けます。
(物語の本筋に関わる変更は不可)
グレイ(性別不問)
肉食動物の擬人化。草食動物の捕食者。
ラヴィ(性別不問)
草食動物の擬人化。肉食動物の捕食対象。
役表
グレイ ・・・
ラヴィ ・・・
ラヴィ「グレイってさ、ニンゲンってみたことある?」
グレイ「ニンゲン? いや、ないな。確かオレの爺さんが若い頃に、僅かに生き残ったニンゲンを食ったって聞いたけどな」
ラヴィ「食った?! え? 食べたの? ニンゲンを? 嘘!」
グレイ「そりゃ腹が減ってる時にフラフラと目の前にくりゃ食うに決まってるだろ」
ラヴィ「そう言えばそうだ。グレイって肉食だった。僕の前じゃ肉を食べないから忘れてた」
グレイ「肉食わねぇもんな、ラヴィは」
ラヴィ「どんな生き物だったんだろうね、ニンゲン」
グレイ「さぁな・・・、ひょろっと生えた雑草みたいに細くて不格好だったって聞くぜ」
ラヴィ「ふぅん・・・。全く想像できやないや」
グレイ「ニンゲンたちが築いた文明とか言うやつも簡単に崩れ去っちまって、絶滅なんてありえないだろうってくらいにこの惑星を蹂躙しつくしたニンゲンたちもあっさりといなくなっちまってさ」
ラヴィ「僕たちはニンゲンの蹂躙から身を守るために、ニンゲンの真似して武器や知恵を手に入れたっておばあちゃんから聞いた」
グレイ「二本足で歩くようになって、共通の言葉を話すようになった」
ラヴィ「でも、火だけは怖くて使えないよね」
グレイ「新鮮な肉を火で丸焦げにして食うなんてもったいないことしやがるぜって思うぜ」
ラヴィ「うんうん、野菜を”茹でたり”、”煮たり”、”炒めた”りして食べたらシナシナになって美味しくないよ。歯ごたえはどこ?って」
グレイ「個体が弱かったから武器だとか道具だとか文明だとかのハリボテで身を守ってたんだな、きっと」
ラヴィ「今も少しだけ遺ってるニンゲンの文明も僕たちが忘れちゃったらきっとなくなるんだろうね」
グレイ「まぁ、その人間が絶滅しちまったとあっちゃそれも無意味な進化だったんだなぁって思う」
ラヴィ「こんな、荒廃して何もなくなった世界には、なんだか全部無意味な気がするよ」
グレイ「オレ達以外の生物を見掛けなくなってどのくらい経っただろうな」
ラヴィ「そんなに経ってないよ。・・・世界が終わるかもしれない今、グレイが傍にいてくれて僕は良かったなぁって思う」
グレイ「お前もホント奇特な性格してるよな」
ラヴィ「グレイにそう言われるとなんか侮辱されているようにしか聞こえないんだけど」
グレイ「侮辱じゃなくて素直にそう思ったんだよ。変わってるって言われないか?」
ラヴィ「そりゃ、あの事件の後には言われたよ?」
グレイ「当り前だよな。オレ達はお前達を単なる餌だとしか思っていない。群れの仲間はオレが怪我してるから追っては来ないだろうと早々に逃げて行ったじゃないか」
ラヴィ「うん・・・、けどさ。痛そうだったんだ」
グレイ「オレとしたことが油断したよな。目先の餌に釣られて追い駆けたら目標を見失った挙句、崖から転落とか超ダセェ」
ラヴィ「結構ドジだよね」
グレイ「うるせっ!」
ラヴィ「怖かったよ? 近付いたら痛いからか警戒してるのか判らないけど低い声で唸ってさ」
グレイ「気が逆立ってたんだよ。腹は減ってるし、背骨は無事だったが強かに打ちつけたから呼吸は辛いし、怪我した前足は痛くて動かねぇし。それに自分のドジっぷりにも腹が立ってた」
ラヴィ「ハンカチを濡らして持って行っただけなのに威嚇と恫喝で唸られてすごく怖かった」
グレイ「なんで放っておかなかったんだよ」
ラヴィ「なんでかな・・・。よくわかんないや。へへっ」
グレイ「判んねぇのかい!」
ラヴィ「だ、だって僕は肉食じゃないから助けたって君を食べる訳じゃないし。ただ、凄く寂しそうに見えたんだ」
グレイ「オレが? 寂しそう。馬鹿じゃねぇの? 怪我して弱ってただけだ。怪我が治ったら真っ先にお前を食ってやるって思ってたさ」
ラヴィ「でも、食べなかったよね? どうして?」
グレイ「お前さ、オレは草なんか食わねぇって言ってるのに、毎日毎日草やら木の実やらオレに運び続けただろう? しょっちゅう怪我した足のハンカチを濡らしちゃ変えに来て」
ラヴィ「放っておけなかったんだ。あの辺りは君よりも大きなクマが出る。弱ってる君を見付けたら君が食べられちゃうって思ったら、なんか辛くて、悲しくて」
グレイ「それが本来あるべき姿だろうが」
ラヴィ「それでも、嫌だったんだ。君の少し紫掛かった灰色の目がとてもきれいで、澄んでいてすごく素敵だったんだ」
グレイ「それだけで看病に毎日来たってのか」
ラヴィ「その、最初の内は無視してたけど、少しずつ話してくれたでしょ? 森の外の話」
グレイ「あぁ。この惑星はもう終わりだって話か」
ラヴィ「その話を聞きたかったんだ。君の話はとても興味深くて僕は大好きだよ」
グレイ「おかしなやつだよ、本当にお前は」
ラヴィ「それに、森と呼べるものがもう僕たちの住んでいるところ以外にはなくなってたって聞いたらそんなのもっとちゃんと話を聞きたくなるに決まっているよ」
グレイ「隕石って言われる物が落ちたとかニンゲンが言ってたってジジイから聞いたんだよ」
ラヴィ「それはもう聞いたよ? でも僕らが住んでた森よりも小さかったんでしょう?」
グレイ「詳しいことはオレにも判らねぇよ。ただ、あの分厚い雲を越えた空の高い場所から降って来るから、ぶつかった時の衝撃がかなり大きくてこの惑星を飲み込んじまったって話だ」
ラヴィ「それで、たまたま僕たちの住んでた森が奇跡的に最後に残ってたって言うんだね」
グレイ「けど、その森は最後の森だったから食い物を求めたいろんな動物に蹂躙されて結局はなくなっちまった」
ラヴィ「気が付いたら仲間は全滅してて、もう僕らだけになってたよね」
グレイ「見渡す限り岩砂漠で草も生えちゃいねぇ」
ラヴィ「草が生えてたって食べない癖に」
グレイ「あのな? 草があれば他の動物がいるかっも知れないだろ? そうしたらオレは食い扶持にあり付けるんだ」
ラヴィ「やっぱり、肉食なんだね」
グレイ「もう、何日食ってないかなぁ。・・・腹、減ったなぁ」
ラヴィ「お腹、空いたね。岩陰に少しくらい草が生えてたっていいのに、本当に何もない」
グレイ「お前さ、草が生えてなくても他の生物見かけたら、オレが狩って来てやるから好き嫌い言わずに食えよな」
ラヴィ「ふぇ?! 肉? いやいやいやいや! 無理無理無理! そんなの食べられないよ!
グレイ「わがまま言うんじゃねぇ、食わなきゃ死ぬんだぞ」
ラヴィ「でもでもでも! 肉なんか食べたら僕たち消化できずに体壊しちゃうよ!」
グレイ「そういや。・・・お前達どうして肉食わねぇのに体が肉でできてるんだ?」
ラヴィ「ふぇ? あー、それ、僕おばあちゃんにきいたことがあるよ」
グレイ「お前ぇのババアは生き字引か」
ラヴィ「そういう酷い言い方するグレイは嫌いだ。いろいろなことをよく知ってるおばあちゃんを僕は尊敬してた」
グレイ「悪かった、すまない。怒らないでくれ。で? なんで肉ができるって?」
ラヴィ「僕たちの体の中にはとてもとても小さい目に見えないくらいの生き物がいて、その生き物たちが僕たちの食べた草を体に取り込んでくれる役割をしているんだって」
グレイ「体ん中に生き物飼ってんのか?!」
ラヴィ「うん。それがないと僕たちは生きていけないからとっても大事なんだけど、勿論その生き物も体の中で溶けて栄養として取り込まれるんだ」
グレイ「つまり、お前達は草食って生きてるが、体の中に生きてるそのちっさい生き物も食い物として取り込んでるってわけだな?」
ラヴィ「そうそう、その小さな生き物に体の血や肉を作る成分が含まれているんだって」
グレイ「はー・・・、小さい体の癖に複雑にできてやがるな」
ラヴィ「グレイたちは大きい体の癖に大雑把にできてるよね」
グレイ「言うじゃねぇか、チビ」
ラヴィ「うるさいデブ」
グレイ「デブじゃねぇよ! 見ろよ、この筋骨隆々のたくましい体付きを! 均整の取れた美しい肢体を!」
ラヴィ「恥ずかしくない? グレイ」
グレイ「・・・恥ずかしいわ、何言わせてんだ馬鹿野郎」
ラヴィ「僕はグレイたちこそよく草とか食べなくて生きていけるよね、って思うよ?」
グレイ「オレは肉食だからな。肉ってより胃や腸なんかが一番うまいんだがよ」
ラヴィ「うぇ~・・・」
グレイ「オレ達が食うのはお前たちのような草食の生き物だ」
ラヴィ「う・・・、うん」
グレイ「お前たちが食ってる草とかそういうものがふんだんに入っているのがはらわたなんだよな。つまりお前達完全食品を丸ごと食うことで栄養バランスは満点ってことだ」
ラヴィ「う・・・、うん・・・。う・・・」
グレイ「ばぁーか、オレはお前を食ったりはしねぇから安心しろ」
ラヴィ「・・・それで、平気なの?」
グレイ「何が」
ラヴィ「グレイにとって僕は格好の餌だよ? それが目の前にいるのにどうしてそんな風に我慢していられるのさ」
グレイ「これさ、首に巻いてるこれ、覚えているか?」
ラヴィ「それは・・・、グレイが怪我した時に巻いてあげたハンカチだよ。そんなぼろぼろなのに、大事に持ってくれてるって嬉しかった」
グレイ「お前は命の恩人なんだ」
ラヴィ「大袈裟だよ。僕はニンゲンのお医者様じゃないから治すなんて到底できないし、治ったのはグレイの生命力じゃない」
グレイ「けどよ、怖がりながらも巣から落ちて死んだ鳥のヒナとか運んでくれただろう? 食う所は見なかったみたいだが」
ラヴィ「うん、可哀想だとは思ったけどどうせ土に還るだけならグレイが食べてもおんなじだろうと思ってさ」
グレイ「お前がいなかったらオレは死んでた。足を折って動けないまま無様に餌も食えずに死んでた。そんな風に助けてくれたお前を食うなんてできるかよ」
ラヴィ「でも。もう、何も食べるものもないんだ・・・、お腹、空いてるでしょう?」
グレイ「それだけじゃねぇよ」
ラヴィ「他に何があるの?」
グレイ「・・・恋を、したからな」
ラヴィ「へ? ぇ? えぇ?!」
グレイ「一生懸命オレを看病してくれるその真摯なまなざしが、とてもきれいで・・・、毎日お前が来るのを待ってた。本当は随分前に歩けるようになってたけど、治ってねぇって嘘ついてさ、お前を待ってた」
ラヴィ「・・・そういう! 恥ずかしいこと、・・・いう。・・・ばか」
グレイ「お前が好きだよ、ラヴィ。恋してる」
ラヴィ「グレイ・・・?」
グレイ「・・・腹、減ったなぁ・・・。目が霞んできやがったぜ・・・」
ラヴィ「へへっ」
グレイ「なんだよ、急に笑ったりなんかして」
ラヴィ「なんだかさ、世界の終わりに誰かが傍にいてくれるって言うだけでもうれしいのに、さ。こんな風に僕を想ってくれう人がいるなんてさ、なんだか最高に幸せだなって思えてね」
グレイ「そうか」
ラヴィ「だから、…その幸せを感じたままでいたいから、僕を食べてよ、グレイ」
グレイ「・・・なんだって?」
ラヴィ「僕を食べてよ、グレイには生きて欲しいんだ」
グレイ「お前、二度とそんなこと言ったら赦さないからな」
ラヴィ「何度だっていうよ! グレイが凄く我慢してるの知ってるよ! 眩暈がしそうな程にふらついてる癖に! ずっと食べ物を求めて二人で歩いて来てさ! なんとなく湿った場所があったら固い土を掘り起こして草の根っことか掘り出してくれて! 僕は何とか食べたけどグレイはずっと食べてないじゃないか!」
グレイ「オレをお前達みたいに弱っちい生き物と一緒にすんな! ひと月やふた月食わなくたって平気なんだよ!」
ラヴィ「嘘吐き! そんなに長い間食べないで平気な筈ないじゃないか! 僕知ってるよ! 夜も眠れずに僕を眺めて首を横に振りながら我慢して、空腹を抱えて眠るグレイを・・・、知ってる」
グレイ「それでも生きてるだろうが! まだ我慢できる。もう少し歩けばきっとなんか小動物がいるかもしれねぇだろ!」
ラヴィ「もう、何日探したか判らない。僕の住んでた森が枯れて、生き物が全部死んじゃって、しばらく食べて来られたけど水もなくなって死体も乾いて食べられなくなってから随分経った」
グレイ「あん時に食い溜めしたから大丈夫なんだ」
ラヴィ「もうどのくらい前だと思ってるのさ! 僕はグレイが死ぬところなんて見たくないよ!」
グレイ「馬鹿野郎! そんなのオレだって同じに決まってるだろう!」
ラヴィ「僕は弱いから・・・、だからグレイがいなかったらすぐに死んじゃうから・・・。きっとグレイは生きていける」
グレイ「お前を食って生きろって、馬鹿を言うな」
ラヴィ「・・・生きてグレイ。世界の終わりでもグレイが死ぬのを見たくないんだ。だから僕を食べて生きてよ」
グレイ「まだ、少し平気だ。どうにも我慢できなくなったら食う・・・。少し、寝るわ」
ラヴィ「・・・うん」
グレイ「あぁ、腹が減ったなぁ・・・。目が回ってやがる。灰色の空には昔、月やら太陽やらってものが見えてたってじいさんが言ってたっけ・・・、けど・・・、腹が、減った・・・」
ラヴィ「眠れないの? グレイ」
グレイ「起きてたのか、ラヴィ」
ラヴィ「グレイが辛そうでさ・・・。よしよし、よしよし・・・。おばあちゃんが眠れない夜に唱えてくれたおまじないなんだ。よしよし・・・」
グレイ「お前の手は小さいな、ラヴィ。こんなに小さくて、柔らかい」
ラヴィ「グレイの手が大きいんだよ。硬くて大きくて、この手で掴めないものなんてないんじゃないかな」
グレイ「そりゃ大袈裟だ。あぁ、けど・・・。ラヴィ、お前の手は柔らかくて、暖かくて・・・、イイ、匂いガ、するな・・・」
ラヴィ「グレイ? ん・・・、ごめん。そんなに強く握り締めたら痛いよ」
グレイ「ふわふわと柔らかい、暖かい・・・、新鮮ナ、肉ノ匂い」
ラヴィ「グレイ! は、離して・・・! グレイ、痛いよ! そんなに強く引っ張らないで! 千切れちゃう!」
グレイ「ハァ・・・、ハァ、ハ・・・、美味そうで・・・、お前はどんな味なんだろう? 今まで食ってきたやつらとは違う気がする」
ラヴィ「嫌だ! グレイ! 食べないって言ったじゃないか! 君は僕を食べたりしない! そう、約束してくれたじゃないか!」
グレイ「そりゃお前ぇ、まだ食う物があった時の話だ。世の中荒れ果てちまってよ、何にも食うもんがねぇ世界で、旨そうな好物を目の前にして食うなっていう方ががぜん無理な話じゃねぇか」
ラヴィ「いや・・・、だ! 離して! グレイ!! 離してよ!!」
グレイ「あぁ、涎が止まらない・・・、肉を舐めて齧りついて、吹き出す暖かな血で喉を潤して、甘い甘い身を味わいたい」
ラヴィ「グレイ! 嫌だ! 僕はまだ食べられたくない! グレイと一緒にいたいんだ! 離してくれよ!」
グレイ「ラヴィの新鮮な若い小動物の肉の匂いが鼻の奥を刺激するんだ。美味そうな、最高にコクがあってきっと旨いんだろうなぁ」
ラヴィ「嫌だグレイ離してくれよ、餌としては見ないって、捕食対象としては見ないって約束してくれたじゃないか!」
グレイ「腹が・・・、減ったんだよ。耐えられないくらいに、もう何日も食っていない。草木じゃオレの渇きは癒せないんだ」
ラヴィ「いや・・・、まだ、話したいことがいっぱいある! もっと沢山グレイと一緒にいたいんだ! ・・・っあう!」
グレイ「肩の肉は歯ごたえがあってうまみが最高だ」
ラヴィ「あぁあぁあぁあぁあ!!」
グレイ「あぁ・・・、この喉を潤す甘い血・・・最高の晩餐だ・・・」
ラヴィ「う・・・、そ、つき・・・。グ・・・、レイの、うそ・・・、つ、き・・・」
グレイ「はっ?! ラヴィ?! ラヴィ・・・っ?! オレは、オレはぁ!! 何をしたんだ!!」
ラヴィ「・・・グレイ? すごい汗だよ? それにすごくうなされてた・・・。大丈夫?」
グレイ「・・・、・・・っ? え? ・・・、ラ、ラヴィ・・・? お前、生きて・・・?」
ラヴィ「何言ってるの? グレイちょっとうたた寝してて、うなされてすごい汗だったから」
グレイ「・・・夢、か。・・・良かった」
ラヴィ「汗、・・・拭いてあげるよ、大丈夫?」
グレイ「・・・っ! 触るな!」
ラヴィ「・・・っ?! ・・・、ごめん。何か気に障る様なことを言ったかな?」
グレイ「・・・ごめん」
ラヴィ「・・・あの、何が気に入らなかったのか、その、教えてくれないかな?」
グレイ「あぁ、いや、何でもない。何でもないんだ・・・。嫌な夢を見ただけだ」
ラヴィ「・・・どんな夢?」
グレイ「・・・お前がいなくなる夢だ」
ラヴィ「・・・っ、そういう・・・、恥ずかしいことをさらっと言わないでよね。ホント心臓が破れそうになる」
グレイ「本心だからしょうがない」
ラヴィ「食べなよ、僕を」
グレイ「まだ言ってんのか」
ラヴィ「・・・もう、辛いんだよ! 草の根も枯れ果てた! 食べるものももうない! グレイはまだ生きて行けるって言ったけど、僕はもう限界なんだ・・・。せめて、グレイのためにならせてよ」
グレイ「・・・お前」
ラヴィ「僕がグレイの立場なら、きっととっくに食べてたよ? 沢山一緒にいてくれてありがとう。もう限界だから、終わりにしてくれないかな?」
グレイ「そっか・・・。判った」
ラヴィ「へへっ、良かった。やっと、そう言ってくれた」
グレイ「最後に、ちょっと抱き締めさせてくれよ」
ラヴィ「うん、勿論。僕もこうしたかった・・・。ねぇ、グレイ、僕痛いの苦手だから、せめて気絶させてから食べてくれないかな?」
グレイ「・・・判った。ちょっと痛いぞ・・・っ!」
ラヴィ「・・・っ!」
グレイ「・・・、風に乗って流れて来るんだよなぁ・・・。腹を空かせて気違いじみたケダモノの匂いがよ。ラヴィはいい香りだもんなぁ。堪らねぇよなぁ? よう、お仲間さんよ。これはオレの大事なものなんだ、てめぇにゃあ勿体ねぇ。さっさと出てきやがれ。ぶっ殺してやるよ!!」
ラヴィ「・・・んっ。・・・あれ? 僕、生きて・・・。グレイ? ・・・っ?! グレイ!! なんで、なんでそんなに傷だらけなのさ!!」
グレイ「あぁ・・・、怪我ぁ・・・、ねぇな。こいつは・・・、死んでるか」
ラヴィ「何があったのさ! なんなんだよ、こいつは! グレイ何したのさ!」
グレイ「簡単なこった・・・。この痩せこけて荒廃した世界でよ・・・、こいつも食い物探して彷徨ってたのよ。ラヴィの匂いに釣られて近くまで来たはいいが、オレがいるから迂闊には手を出せない。オレが寝てる隙でも狙ってたんだろうよ・・・。だから、殺した」
ラヴィ「喋らなくていいよ! グレイ! 喋っちゃダメだ! 血が! 喉も、胸にもすごい傷がついてるじゃないか! こんなの、ハンカチじゃ足りないよ!」
グレイ「あぁ・・・、もういいよ。十分に、生きた・・・」
ラヴィ「嫌だよ! 死んだらダメだよ! 僕、一人になっちゃう!!」
グレイ「世界の終わりに・・・、一緒にいてくれたお前を・・・、食べるなんて、・・・オレにゃできねぇ・・・」
ラヴィ「嫌だよ! グレイ! 死んだら、嫌だ・・・。もっと一緒にいたい、一緒にいたいんだよ! グレイ」
グレイ「オレは・・・、満足したぜ? お前は・・・、見た目より欲張りだなぁ」
ラヴィ「死なないで! グレイ!!」
グレイ「なぁ・・・。好き嫌いは良くないぞ、・・・こんなご時勢だ、何でも食って生き延びろよ。それが例えオレの死体でも、生き延びるために食え。食って生き延びろ・・・、よ」
ラヴィ「嫌だよ! 嫌だ・・・、グレイ! グレイ!!」
グレイ「お前と、逢えてよかった。ありがとう・・・、ラヴィ。さようなら」
ラヴィ「嫌だ! 嫌だグレイ!! いやだぁあぁあぁあぁあぁぁぁ!! あぁあぁあぁあぁああああ!!」
ラヴィ「・・・ばか、グレイ。恋してるって言い逃げしないでよ、僕だって君が好きだった! ねぇ、好きだったのに・・・、伝えられなかった。ねぇ、グレイ・・・。例え君を食べて僕が生きることを選んだとしてもさ。この世界は荒廃し過ぎてて一人で生きていくのは辛いや。ごめんね、君の最期の遺言なのに、僕は君を食べられない。だから・・・、君の隣で眠らせて欲しいな・・・、グレイ」
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