ルイは鷹を呼ぶ
一次創作サークル
~カミカゼ -友ノ命ニ涙咲ク-~ 男2:女0 上演時間:25分 作者:白鷹
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西村 和彦 ♂ 19歳
元は小さな和菓子屋の長男。徴兵によってではなく自ら志願し、陸軍予科士官学校を経て陸軍飛行隊に入隊。万世基地、第210部隊彗星隊杉本隆中尉の指揮下に於いて特攻が決まっている。特攻に赴く前の数日間を基地から少し離れた田舎で過ごす恩給を貰った。沖田とは同期で入隊して以来親しくしている。
沖田 淳一 ♂ 19歳
名前も覚束ない田舎で生まれる。日本の未来を信じて、陸軍予科士官学校を経て陸軍飛行隊に入隊。万世基地、第210部隊彗星隊杉本隆中尉の指揮下に於いて特攻が決まっている。特攻に赴く前の数日間を基地から少し離れた田舎で過ごす恩給を貰った。だが優等生と言われて来た彼の本心は・・・。
役表
和彦 (♂)・・・
淳一 (♂)・・・
和彦「・・・ごめん。・・・ごめん! 沖田! 無様に生き残ってごめん! お前に続くことができなくてごめん! 英雄と呼ばれる筈だった僕たち神風特攻隊の名を、特攻崩れなどと呼ばせて、ごめん!」
淳一「なんだ西村、お前も眠れないのか。夜中に屋敷を抜け出してこんな草むらで星なんか眺めて」
和彦「・・・沖田。逆に聞くが、こんな心持ちで夜をゆっくり眠れる奴がいるのか?」
淳一「お前ってやつは・・・、本当に素直だよな。自分の心を裏切るということを知らない」
和彦「沖田みたいに強くなれればそれに越したこともないんだろうけどさ、僕は理路整然と心を制御できる程頭が良くない」
淳一「頭のよさじゃないだろうさ。頂いた恩給で僕達はこの伊佐家の領地で贅沢をさせて貰っている」
和彦「ここのご令嬢に罵倒されたよ。東京の都心部では三日に一度、吹かし芋が配給されれば、それを分けて食べるこのご時勢に、白米や魚やビフテキなんてものを食わせて貰って酒まで飲ませて貰える。大した御身分ですねってさ」
淳一「茜さんか。くるくるとよく動き回る、明るくて快活なお嬢さんだな」
和彦「茜さんと直接話をしたことがあるのか?」
淳一「あぁ、まぁ。姉の千尋さんと一緒に客人に対するもてなしがなっていないと、伊佐さんに怒られていたから、僕達は充分もてなして貰っていると窘めた」
和彦「勿体ないくらいのもてなしを受けているのに、まだ足りないと思っているのか」
淳一「軍令だからな、万が一粗相があっても伊佐家の家督に関わると思っているんだろうさ」
和彦「茜さん、ぶすくれていたんじゃないのか?」
淳一「あぁ。男子厨房に立ち入らずで育ったおぼっちゃまが邪魔をするんで、うまく捗らないだけですって親父殿に食い付いていた」
和彦「・・・それ、僕のことじゃないか?」
淳一「そうだろうな。お前は絶対に茜さんに気があるんだろうと、同期の奴らはみんなで噂しているぞ」
和彦「うわっ、マジか・・・、恥ずかしい」
淳一「恋なんて、しない方がいい。どうせ僕たちは」
和彦「・・・どうせ? 珍しいな。沖田がそんな言い方をするなんて」
淳一「・・・新聞、読んだか?」
和彦「いや? 新聞なんて読んだって憂鬱な情報が記載されているだけだからな。読めば心が折れる」
淳一「フィリッピンで百死零生の戦いに突撃を命じた将軍が、戦況不利を悟るや否や敵前遁走したらしい」
和彦「敵前遁走・・・。沖田は、その記事を読んでどう思ったんだ?」
淳一「優等生の僕は、皇国軍人にありながら卑しい命根性で、大日本帝国の男児の恥晒し、と思ったよ」
和彦「・・・優等生の僕は? どういう意味だ」
淳一「・・・(深い溜息)。星がきれいだな。沖縄の東方で激しい戦火が上がっているなんて、この星空を見るだけでは判らないな」
和彦「なんだか煙に巻くような、モヤっとする言い方をするな」
淳一「あのな、僕だって成績を上位に収めているだけで人間らしい感情はある積もりだぞ?」
和彦「そりゃそうだろうとは思うが、それを自制できるだけの理性を持ち合わせているのが、沖田淳一という人間だろう?」
淳一「僕たちは、僕たちの命を以てこの戦争を終わらせて、日本を勝利に導くことができると思うか?」
和彦「それを僕たちが疑えば、間違いなく日本は敗けるだろうな」
淳一「そう。この正念場に日本は敗ける訳にはいかない。だからこそ弱音を吐いてはならない」
和彦「・・・沖田、お前」
淳一「こんな心を知らねば、もっと果敢に特攻する事も出来たんだろうか、と思う」
和彦「こんな思い、って?」
淳一「人生僅か二十年、惜春の情未だ心に咲き初め、青山白雲の明々たるを感じ、皇国興亡の渺々に我が命を賭して、我が身五尺の形骸を振りしきり、昼夜朗として桜花鱗粉の舞を見る。美まし国に在りて、美まし少女の優麗、目に映るは艶なる脂粉の白き頸、其は偲ばしつ、桃源の夢覚めやらんとぞす、初めて戒めを知る」
和彦「お前・・・、沖田。もしかして千尋さんのことを」
淳一「優しい人だからな。僕たち全て平等に、優しいから。勘違いだと思いたい」
和彦「まぁ、千尋さんは美人だし楚々としてて僕たちの中にも擦れ違うだけで頬を染めるやつもいる」
淳一「誰だそれ? 弁慶の泣き所に一発入れておくべきだな」
和彦「やめてやれ」
淳一「千尋さんに色目を使うとか赦すまじ」
淳一「このトラック、もっとゆっくりと運転できないのか、下手に喋ると舌を噛みそうだ」
和彦「馬鹿だな・・・。みんな覚めやらぬ夢のままでいたいんだ。喋る元気もないさ」
淳一「・・・西村。お前茜さんの想いを受け取ったのか? 彼女お前に好意を抱いていただろう」
和彦「これから死ぬと判っている状況で気持ちを受け取ることなんかできると思うか? 無責任だろう、なぁ沖田」
淳一「なんだ、知っているのか。僕が千尋さんと寝たのを」
和彦「茜さんから聞いた。今朝方、お前の部屋から千尋さんが出てくるのを見たって」
淳一「余り大きな声で言わないでくれないか」
和彦「外聞が悪いからか」
淳一「僕と枕を交わしたのは同情からだとはっきりと言われたんだ。婚約者の耳に万が一にでも入れば不貞を働いたと後ろ指をさされるから、口外するなとも言われた。つまりな、はっきりと振られたんだ。失恋の傷を抉らないでくれないか」
和彦「・・・同情? けど、もしその一夜で千尋さんが孕んででもいたらどうする積もりなんだ」
淳一「・・・そこまで考えていなかったな。あの、美しい人をこの腕に抱けるならそれでいいと思った。もっとも、千尋さんにはそんな浅慮、見抜かれていて、餞にならないなら私娼でも買って来いと怒られたよ」
和彦「・・・そうか」
淳一「どの道、恋が実っていてもいなくても未来は変わらない。僕たちはこれから沖縄上空の雲を抜けて青に散るんだ」
和彦「もうすぐ基地に到着だ。そろそろ私語を謹んで軍人としての誇りを顔に刻まないと杉本鬼中尉に弛んでいると殴られる」
淳一「あぁ、あぁ、なんとも最期に見るならやっぱり美女の顔を拝みたいよ」
和彦「・・・お前、それは千尋さんの罵倒は当然だぞ?」
淳一「伊佐家の廻廊に掛かっていた家族写真、千尋さんの所だけでも切り抜いて来ればよかったな」
和彦「優等生の言葉とは思えないな。最低だ」
淳一「いいじゃないか。写真くらい」
淳一「お前はまた寄宿舎を抜け出して、こんな真夜中に外に出て。西村が軍律を乱すと僕が連帯責任で杉本中尉に怒られるんだぞ」
和彦「なんでだよ」
淳一「どうやら杉本中尉は西村の御守り役は僕に任せたとでも言いたげだったな」
和彦「連帯責任って何だよ。責任も糞も、僕たちは明日死ぬんだぞ」
淳一「糞だなどというな。名誉だ、栄誉だ。僕たちは誉れ高き大日本帝国の皇国軍人だぞ」
和彦「せめて、妹に、母に手紙か葉書を送りたかった。僕の命に意味はあったのか、と」
淳一「封書や葉書には検閲の目が特に厳しい、余計なことを考えるな」
和彦「お前はそんなこと考えたこともないんだろうな。戦慄を覚えることもないんだろうな。優秀なお前は潔く沖縄の上空に笑顔で特攻できるんだろうな? 僕なんかと違って!」
淳一「馬鹿にするのも大概にしろよ!」
和彦「・・・っ?!」
淳一「お前の無神経さに心底腹が立つさ! 戦慄を覚えない? 不安がない? 心残りがない? 優等生だ? ふざけるなよ!」
和彦「沖田? お前・・・、泣いて」
淳一「お前は人一倍怖がりで感性が豊かだから傷付きやすい! 母親はそう言って勉学に打ち込むことを教えた! 何かを学んでいる間は恐怖を忘れられる、傷付くこともない、打ち込む特技もないし理工学を学べるほど優れた頭ではないのだから、恐怖に打ち勝つために勉強をしろと言われた!」
和彦「・・・理工大学生は赤紙が届かないからな」
淳一「恐怖で膝が折れそうになる時も、新聞で敗戦の色が濃いことを知った時も怖くて泣き出したくなるのを、自分は優等生なんだと言い聞かせて持ちこたえて来たんだ! それを、お前はまるで人間味がないような言い方をする!」
和彦「じゃあ、ここで悲観する僕を責める権利なんてどこにもないじゃないか! お前は世界一の弱虫だろうが! ・・・っが!」
淳一「なら、逃げ出すか! 西村!」
和彦「殴りやがったな! この・・・」
淳一「ぁがっ! 僕が兵役逃れをするためにどれだけ色々調べたと思ってる! 体を毀損しようか、難聴の振りをしようか、詐病しようか、中尉の目を盗んで離脱しようか! 毎日毎日どれだけのことを考えていると思っている!」
和彦「それだけのことを考えていると暴露して、僕に寄宿舎へ平然とした顔で戻れって言えるのか!」
淳一「僕が言わなきゃ誰が言う!いつでも弱音ばかり吐く西村をどんな気持ちで僕が慰めて鼓舞して来たと思ってんだ!」
和彦「僕を鼓舞して来た? 嘘っぱちもいい加減にしろ! 全部全部、僕を慰める振りをした自分への言い訳じゃないか!」
淳一「そうだよ! お前を慰めて、そうしたら・・・、お前はここに居て、自分は一人じゃないと思える。とんだ笑い話だ。判っているさ。それでも、そうやって乗り切らないと正気なんて保って居られるか!」
和彦「・・・悪かったよ。ごめん、沖田。お前がそんな風に苦しんでいるのも気付かずに、ただ強いと妄信して、僕は沖田に頼りっぱなしだった。済まない」
淳一「怖いさ! 死にたくない! まだやり残したことがある! なぁ、西村。僕と一緒に離脱してくれ! 一人じゃ、怖くて抜けることもできないんだ、僕は!」
和彦「・・・沖田。離脱はやめよう、捕まって払う罰金もない、親に迷惑だってかけられない。軍属して内地に留まる伝手もない。もう、僕たちだけ逃げたって、どうしようもない所まで日本は追い込まれているんだ」
淳一「どう足掻いたって命を擲つこの戦法からは逃れられないからな」
和彦「あぁ、南方の戦地に赴いている歩兵、砲兵、工兵は武器が与えられればいい方だと聞いている」
淳一「こんな所で喧嘩してるのなんか見付かればソ連国境を守る邀撃部隊に送り込まれちまう」
和彦「黄色爆薬筒二本を手りゅう弾を針金で縛っただけの惨めな爆薬で巨大なT34戦車に突撃して火だるまになれってか」
淳一「小銃一挺が二人に与えられることもない、兵備の劣悪さは目を覆いたくなる程だというから、人間爆薬しか残っていないんだ」
和彦「僕たちは例え整備の行き届かない練習機であろうと、飛行機を与えられるだけマシ、ということか」
淳一「神風特攻隊は、果敢な邀撃戦を展開だとか、無敵の精鋭だとか、征矢に一輪の桜花だとか美辞麗句に彩られてるよ」
和彦「散々に持ち上げられているが死刑宣告と変わらないもんな。国のために命を棄てよ。まともな精神状態で乗り切れるなんて、本当に浅慮が過ぎたな、ごめん沖田」
淳一「清々たる勇士をで空に散っていった仲間たちの遺書を見るとどれもこれもみな、国のために渺々たる命が糧になると喜び誇りを持っていると書いてある。・・・僕には、あれが本心だとは思えない」
和彦「敵だって相当病んでいるさ。憐れむなんて愚かな感情も湧かないけど、みな口々にKill japs, Kill japs, Kill more japs! としか叫んでいないらしい」
淳一「相当、気が狂っているな。いや、洗脳されているんだろう」
和彦「妹や母親に向けて、自分は命果てるが勝利した日本の大地でどうか幸せに」
淳一「我が愛しき妻よ、子を愛でて我の勇士を子に伝え給へ」
和彦「先に逝ったお父さん、まもなく息子も参ります。その両手を広げて待っていてください」
淳一「妹よ、我に捧ぐは挽歌でなく頌歌であれ」
和彦「日本万歳、日本万歳と叫びながら特攻しているなんて嘘だよな」
淳一「東京は勿論、名古屋や大阪などは既に灰燼と化してとても人の住める場所ではないらしい」
和彦「人道なんて欠片も持ち合わせていない豺狼思わしく、物欲、獣欲に塗れていて蹂躙と殺戮しか考えていない」
淳一「それでも千尋さんは日本の将来を信じていた」
和彦「茜さんもだ」
淳一「伊佐家の方々は皆、自らが特攻できぬ身の上を嘆きながらああして恩給の拠り所となっていたんだろうな」
和彦「戦場にはでなくても、立派な兵士たちだ」
淳一「・・・そうだな。なぁ西村、可能性なんて零だし夢見ることすらバカバカしいが、もしも日本がこの戦争に勝利して、もしも僕たちが生きて帰ることができたら、将来何をしていると思う?」
和彦「飛行機は片道分の燃料しかないんだぞ? どうやって帰る」
淳一「そうだな・・・、海底を歩いて帰るか」
和彦「それは、気持ちいいだろうな。魚の友人が増えそうだ。お前は将来を夢見たのか」
淳一「僕は、そうだな。帰ったら千尋さんの腹に僕の子がいて、「お前のお父様は果敢に戦って亡くなったのよ」って説明しようと思っていたのにどうしてくれるんですか、なんて責められるのも悪くないなぁ、なんて」
和彦「お前、前から思っていたが気の強い娘が好きだよな」
淳一「僕が弱いからじゃないかな。そうやって強く支えてくれないと崩れてしまうから」
和彦「僕はそうだな。菓子屋は閉鎖しているだろうからさ、その場所を洋裁好きの妹のために小さなブティックにでもしてやれればなと思っているよ」
淳一「お前の妹って、確か結婚するんじゃなかったか?」
和彦「ドレスを縫うのは好きらしいからな。きっと結婚式のドレスも自分で縫う積もりなんだろうと思う」
淳一「いいなぁ、じゃあ妹の作ったドレスを千尋さんに着せてあげたいな」
和彦「ばかばか、妹の作るドレスが伊佐家のお嬢様に釣り合うもんか。千尋さんはもっと華々しいドレスを着るだろう」
淳一「そもそも白無垢かもしれない」
和彦「ダメじゃないか」
淳一「・・・そろそろ宿舎に戻ろう。どうせ眠れぬ夜だが、起床まであと一時間半だ」
和彦「みんな神経が逆立っている。バレないように慎重に戻らないとな」
淳一「明朝、また逢おう」
淳一「第210彗星部隊沖田淳一! 杉本中尉の指令の元、97式戦闘機に搭乗し、沖縄東部に待ち受けるフィリッピンの敵を私の97式で全機撃墜する覚悟で参ります!」
和彦「同じく第210彗星部隊西村和彦! 杉本中尉指令の元、98式直協偵察機に登場し、沖田と共に沖縄東方敷設駆逐艦を目指し輸送挺全撃墜する覚悟で参ります」
淳一「西村、沖縄の空で華々しく散り、蒼い世界でまた逢おう」
和彦「あぁ、沖田。お前と共に過ごした陸予の想い出を沢山持って行くよ。酒盛りの準備、しておけよ」
淳一「参ります!」
和彦「参ります!」
淳一「天候良し、風僅か、雲微か、梅雨時にはみな雨天時に視界の悪い中東方に飛んだというから、僕はまだいい方なんだろうな。彗星隊の仲間は、全員いる。敵の影はまだない」
和彦「思ったより距離が長い。98式に積まれた燃料はちゃんと足りていたか? フィリッピンの海で不時着なんてしたら敵の捕虜になって無様を晒すだけだ。足りてくれよ、燃料」
淳一「敵艦隊発見。作戦通り海面すれすれを突っ切る。よし、みな急降下、作戦続行だ」
和彦「・・・っ! 敵の迎撃砲! くそ3機右翼を持って行かれたな! ・・・っ?! なんで? そのまま突っ込む?」
淳一「敵兵さんも必至だな。左側4機特攻。隣は・・・98式! 西村か。なんだ? あんなに青褪めて」
和彦「沖田! 機体を近付けて来てくれたのか! 作戦をこのまま決行するのか? 砲弾が凄まじい」
淳一「杉本中尉が敵レーダーを撹乱するために偵察機で西方に錫箔を散布している。あの砲弾はでたらめだ。狙い撃ちはされない、落ち着け西村」
和彦「対空砲火でまた5機やられた! 沖田! 沖田!」
淳一「往くぞ、西村! 敬礼くらい覚えているだろう」
和彦「・・・沖田? 敬礼なんてして。あ・・・、左舷を持って行かれたのに、あんな真一文字に! 沖田!」
淳一「忘れろと言われたあの一夜を、僕は忘れられません。千尋さん、あなたを愛しています」
和彦「沖田あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!! あぅっ! 横風が!! くそっ 機体を立て直さないと! 操縦桿が! くそ、動け! 動け! 沖田に続け! 僕は! 僕は! しまった! 砲撃を受けた!! 機体が・・・、もう、飛べない。うぅっ!! うわぁあぁあぁあーー!!」
和彦「昭和20年8月15日正午、第二次世界大戦、終戦。日本は、敗けた---」
終戦の後、日本のあちこちには魯毛子が敗者である日本国民を制圧し蹂躙し、結婚を間近に控えていた僕の妹は破談になり、外国人専用の娼婦となった。
無頼漢、非国民と罵られ謗られ、実家に居られなくなった僕は、どこかで死に処を探しながら、ふらりと立ち寄った伊佐家の世話になることになったが、頻繁にPTSDの発作を起こし、夜中に喚き散らし、刃物を持って自傷行為を繰り返し、涙でぐしゃぐしゃになりながら布団に包まったまま数日間を過ごすなどして、呆れた伊佐家から追い出された。
けれども、茜さんは伊佐家を棄てて僕について来てくれた。
仲間に対する罪悪感が発作を起こすのだ、と終戦後33年を経た頃、髪もまだらになった茜さんに誘われて、万世特攻平和祈念館に祈願を含めて赴いた。
---そこで、平和祈念館の万世特攻慰霊碑に沖田淳一の名前を見付けた。
和彦「共に往こうと言ってくれたのに・・・! ・・・ごめん。・・・ごめん! 沖田! 無様に生き残ってごめん! お前に続くことができなくてごめん! 英雄と呼ばれる筈だった僕たち神風特攻隊の名を、特攻崩れなどと呼ばせて、ごめん! ごめん・・・」
しんぷうとっこうたい
ひゃくしれいしょう
てきぜんとんそう
けむ
せきしゅん じょういま
そ
せいざんはくうん めいめい
びょうびょう
と
ごしゃく けいがい
ろう おうかりんぷん
う う ゆうれい つや しふん
うなじ そ しの
とうげん
そ
はなむけ
たる
いっちょう
キル ジャップス キル ジャップス キル モア ジャップス
ばんか しょうか
かいじん
さいろう
じゅうりん さつりく
かぜわず くもかす
げいげきほう
ろーもーず
ようげき
びょうびょう